Bar 宵闇亭 【TRINSIC OF THE DEAD 2】 ~I'm in the Darkness~ 8 忍者ブログ
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❖トリンシック・トリビューン 2015年2月28日
 【市長記者会見 「ゾンビ事件」への対抗策を指示】
 2月28日午後、トリンシック市庁舎にて、アーサー市長が記者会見を行った。
 10名近い犠牲者が出たとされる今回の事件について、アーサー市長は「遺憾の極み。市民や聖騎士の命を無為に奪った犯人をけして許すことはできない。全力を挙げてこれに対応する」と発言した。
 ───今回の事件の首謀者は、もう特定できているのですか。
 既に目星はついているが、捜査の為にコメントは控えさせて頂く。
 ───市庁舎として、今後どのように対策なさるのですか。
 現在、押収した薬品類を詳しく調査している。犯人の目的がバイオテロであるのは明らかだ。以前同様ライキュームで対抗薬を作り、トリンシック全域に配布して薬害を未然に防ぐ。
 ───それまでの間、市民に危険はないのですか。
 警備体制を変更した。同時に、市民は各家に配布した冊子に従い日常生活に気をつけて欲しい。それが感染を防ぐことに繋がる。
 またアーサー市長は、聖騎士見習いの一部を昇格させ、聖騎士団に編入することを発表した。
 惨殺事件によって出た欠員を埋め、警備の強化を図る目的と思われる。

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 知識と経験を与えたのは失敗だった────
 かつてそうレクイエムが言っていたとおり、真相を掴んだ騎士団の動きはおそろしいほど早かった。
 今までちんたらと誘拐捜査をしていたのが嘘のように、続けざまに手を打って俺達の動きを封じてくる。
 あとはじわじわ追い詰められて、いずれ一人づつ、あるいは一網打尽に潰されるだけだろう。
 俺たちはとっくに積んでいる、そんなこと分かってる。
 悼ましげな表情で新聞の一面を飾る「アーサー市長」の顔を、俺はガリガリと掻き毟った。
 本物でもないくせに、よくもぬけぬけと、なぁ、お前は誰なんだよ、なんでアーサーを騙ってるんだよ、本当のアーサーはどこへ行ったんだよ、どうしてここに居るんだよ、なぁ、なぁ、なぁ!
 聞きたいことはたくさんあるのに、俺達はまだ一度も言葉を交わしたことがない、それどころか、こいつは俺のことなど知りもしない。
 不公平だよな?
 俺は自分の名前が思い出せない、子供の頃の思い出も、惨めな挫折の記憶も、こんなに鮮やかに残っているのに、俺は俺が誰だったかわからない。
 同じ、名前の無い者同士、もっと公平になろう、俺の不幸の分だけ、お前も不幸になってくれないと。
 あいにくこの男は市庁舎に篭もりきりで、常に騎士団に守られている、そこへ襲撃をかけるのはバカバカしいと、俺の腐っているかもしれない脳味噌でもわかる。
 かといって隙ができるまで待っている時間はない、もう黒い薬はライキュームへ送られてしまった、以前はどのくらいでワクチンを作られたっけ、3日、4日?
 薬自体以前とは進化しているから、もっと時間がかかるかもしれない、でもどっちにしろ、ワクチンが出来てしまえばすべておしまいだ。
 だから、その隙間を。
 奴らが一番油断する瞬間を、狙うしかない。


❖トリンシック・トリビューン 2015年3月7日
 【ワクチンの材料確保 8日、市長と共にトリンシックへ到着】
 3月6日午後、トリンシック市庁舎は、市民分のワクチンの材料が確保できたと発表した。
 トリンシック市は2月25日から、地下に潜伏していたテロ組織から押収した薬品をライキュームへ運び、対抗薬の開発に着手。
 ワクチンは3月2日に完成したが、希少な素材を使用するため大量生産が難しく、アーサー市長自らが各都市を周り、材料の確保に奔走していた。
 ワクチンの材料は、8日に複数の船便でトリンシックに到着する予定。
 トリンシック騎士団は、未だ潜伏を続けるテロ組織がワクチン配布を妨害する可能性を考え、都市警備を強化、到着する材料も冒険者を雇って厳重に護送する意向だ。

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「明日だ」
 俺はトリンシック・トリビューンを放り投げて、並ぶ仲間たちに言った。
「もう潜入の手筈は済んでいます」
 進み出た仲間が、自信ありげに答える。
 俺達の唯一だが最大のアドバンテージ、それはヒトと変わらない姿と知能だ。
「まだ情報は公開されていませんが、既に騎士団の大部分はワクチンを投与されているようです。彼らを狙うのは得策ではない。狙うなら……」
「ワクチンを護送する冒険者、だな」
 募集された冒険者の中に、数人の仲間を潜り込ませた。
 幸い騎士団の大部分は、避難させた市民の護衛にあたっている、奴らが出てくる前に、出来る限り冒険者を感染させる。
 ワクチンは作らせない。
 今の俺達では、また知性のない食い意地だけの化け物しか増やせないが、それで充分だ。
「数で押し切って騎士団を壊滅させ、バリケードを破り、市民を皆殺しにして、この街を滅ぼす」
 わかってる、ただの希望だ、そんな簡単にはいかないだろう、でも俺は、分からせたい、お前らに思い知らせたい。
 俺は、俺は、

 俺 は こ こ に 居 る。
 I'm in the Darkness.

 誰にも気付かれないまま消えたくない、一人闇の中で終わりたくない。
 明日ここへ帰ってくるという紫の目のアーサー、その目に絶望が浮かぶところを見たい、そうしたら俺は、今より少しだけ幸せになれる。
 もしこの手が届いたら、絞め殺す前に名前を聞こう、本当の名前を。
「トリンシックに死を、「アーサー」に死を!」
 俺を知れ、俺の憎しみを知れ。
 お前たちが明るい場所を歩く間、暗闇で育み続けた俺の心を!
 俺にはもうそれしかない、俺の望みは誰かの不幸でしか満たせない。
「死を、死を、死を!」
「レクイエム様の仇を!」
「この街に永遠の鎮魂歌を!」
 薄暗い部屋に響く呪いの声、俺の憎悪に感染した、この街を恨まずにいられない可哀想な者たち、さぁ一緒に行こうじゃないか、あいつらを少しでも多く不幸にしてやるために。

 この暗がりから這い出して。

 

イベント【TRINSIC OF THE DEAD 2 ~ From Darkness ~】

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出雲トリンシック パラディン島
訓練施設内会議場にて開催

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夏の益荒男祭り
蜘蛛城脱出大作戦!!

2016年8月7日(日)夜10時より
市政ストーン前集合
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